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敬心学園

2017.01.20

専門学校新聞社発行の「専門学校新聞(平成29年1月15日発行号)」に、弊法人理事長、小林光俊へのインタビュー記事が掲載されました。

高等教育の大転換期を迎え、職業教育のさらなる発展を

「教育投資」で若者が自立できる環境の整備が必要

全国専修学校各種学校総連合会の会長を仰せつかって5年目に入りました。この中で、3年前に文部科学大臣が認定する職業実践専門課程の制度ができました。これはあくまでも実践的な職業教育に特化した先導的な取り組みであり、国が職業教育を基本的に大切にする意思表示を形にしたものと理解しています。

さらに職業教育が従来の大学と同等に評価され、位置づけられる「専門職大学」(仮称)が創設されることになりました。これは会員校の皆様のご理解とご指導、国会議員の先生方や文部科学省のご支援があってのことです。国民のニーズに基づいた大きな教育改革に会長として携わることができました。

2017年は世界の首脳が代わり政治、経済が国際的にも国内的にも大きな転換期を迎えます。また本年は職業教育体系の転換期でもあり、会長として仕上げの年という意識を持って取り組んでいきたいと考えております。専修学校制度の創設から42年、文部科学大臣認定の職業実践専門課程の創設から4年、そして本年は待望の専門職大学への申請開始年度となります。

職業教育の新しい成果が形として見えてくるのは、まず新しい制度に基づいて職業教育を受けた卒業生が産業界でどのように評価されていくか、ということでしょう。まさにアウトカム(教育政策の成果)の世界に入っていきます。アウトプット(政策・施策の結果)よりアウトカムです。アメリカもEU諸国も格差社会を広げすぎた時代がありますが、ここを是正したのは教育でした。我が国も教育投資を確立していかなければいけないと思います。

特に、高等教育を含めて学び直し支援等国民全体の底上げのための教育投資は大変重要だと思っています。「一身独立して一国独立す」と福沢諭吉先生が130年前に言っています。一人ひとりが経済的、社会的に独立することによって、国そのものが独立する。そのことをもう1度私は日本国民として、考えていく必要があると思っています。一人ひとりが自立して、人間として成長していける社会を構築することが重要であると思います。

世界の職業教育のハブ機能、日本の果たすべき役割に期待

昨年は「シンギュラリティ(技術的特異点)」が話題となりました。まさに2045年には、AI(人工知能)が人間の知能を追い抜く技術的な特異点だとアメリカの未来学者のレイ・カーツワイル氏が言っています。

そのことの裏付けとして、キャシー・デビットソン氏は、「2011年度に小学校に入学した子供たちの65%は、大学卒業時に今は存在しない職業についているだろう」と言っています。マイケル・オズボーン氏も15年後には人力でやっていることが、AIに取ってかわられると言っているわけです。社会の変動は速く、それに備えて教育体制を考えていかないといけません。

これは昨年提示された国際的にも大きなテーマだろうと感じています。東京大学入学への挑戦、プロ棋士との対戦、自動車の自動運転もそうです。

トヨタ自動車が設立した豊田工業大学では、最先端のAI研究が行われており世界的にも注目を集めています。ドローンにAIを搭載して研究することが実際に起きています。怖いことでもあり、そこを抑制していくのも人間の“愛”と“叡智”です。これが今後クローズアップされていくことでしょう。

社会の動きはますます速く激しくなると私は思います。産業革命の歴史を見てみると、第一次産業革命の蒸気機関車と、第二次産業革命の石油でほぼ150年かかっています。第三次産業革命はいまから20年前のインターネットです。インターネットはシリコンバレーからはじまり20年で世界を席巻し、これからは第四次産業革命でAIの時代と言われています。マイケル・オズボーン氏の話を総合しますと、あと10年くらいでAIやIoTの時代が到来する可能性があるとされています。そういう意味ではサイクルは非常に速いのです。ただし人間としてのホスピタリティやマネージメント、クリエイティブあるいはデザインの分野はなくならない。ますます重要視されていくことになりますので、教育はそこに注力していくことが必要です。

いま政府は、一人ひとりの主体的な学びを支援し、グローバル化やIT化に対応した高度な職業に特化した新たな高等教育機関を設置する、国民の学び直しによる職業能力の向上を図る、これを成長戦略の柱とすると、未来投資会議でも言っています。

ヨーロッパ諸国を見て強く感じたことがあります。そこでの高等教育に共通していることは、学生の半数以上が学術教育ではなく、高度で実践的な職業教育を学んでいるということです。すでにEQF(欧州資格枠組み)やNVQ(イギリスの全国職業資格)などは、国際社会の常識になりつつあるのです。

我が国においても今後は国民の学び直しを支援して職業教育の高度化によって産業界の生産性を高め、付加価値を上げ、特に地方の人々の活性化や地方創生に繋げていかなければなりません。

一方、社会的格差、経済格差、地域格差、教育格差を是正することによって、若者のニート・フリーターを減少させ、長期的な視点で納税者を増やしていく。これは国の財政の安定に寄与する政策に合致することでもあります。

さらに地方の産業空洞化を防ぐため、若者の定着を図るためにも、それぞれの地域にある専門学校を社会的資源と考えて、有効活用することが大切です。地方、都市を問わず実践力を養成する職業教育で、国民一人ひとりの付加価値を高め、学び直しの社会人や留学生の受け入れも含め、世界の職業教育のハブ機能を日本として果たしていけるようにすべきでしょう。

学校教育法の改正と新しい高等教育機関の創設に向けて

改めて、新たな高等教育機関の制度化に関するこれまでの歩みを振り返ってみますと、一連の動きは専門学校を学校教育法の第一条に位置づける運動からスタートしたのです。これが専修学校の立場からすれば理想でした。ところが現状の中では、なかなか位置づけることが難しかった。一条校に位置づけることだけでは、留学生に国際通用性を担保する“学士”を与えることが出来ないということもありました。そこで職業教育を理想的に発展させられる方途は何かを考えました。

4年前に新たな新機関の先導的試行として職業実践専門課程が創設され、この課程が文部科学大臣認定になったことは新機関の制度化の議論に大きなインパクトを与えました。この新たな制度の評価は、卒業生が社会に出てからなされるでしょう。新しい制度によって、所管する文部科学省の業務も倍増したそうです。文部科学大臣認定ということで、当然、国としても力が入るわけです。また国際社会からも大臣認定ということで、専門学校の評価が一段と高まっています。

昨年5月30日の中央教育審議会の答申は、高等教育にとって大きな節目となりました。職業教育を高等教育として明確に大学として位置づけ、国として認めていくというものです。高等教育制度改革の必要性を謳った中教審の答申は画期的な提言でした。産業界の意見も反映したバランスの取れた内容となっています。もう1つの特色としてグローバル化も視野に入れ、EQFやNVQに対応した内容にもなっています。

また日本における教育の現状は大学偏重で、大学に行けば何とかなるという社会風潮が根強くあります。しかし、もうそのような時代ではないのです。アクティブ・ラーニングの導入という観点から考えても、小中学校はもちろん、高校においても教育方法の改革が求められているのです。主体的に学ぶことが出来なければ、国際競争に勝つことはできません。

教育の根本は何かということも、考え直すような機運が盛り上がっています。要するに実学をもっと重視していこうということです。実学で国民一人ひとりが社会的に自立していかなければなりません。そのために高等教育の改革を進め、社会的、経済的に自立できる若者を育てていく。そのために新機関を高等教育として位置づけることは大変重要なことです。

現在、一般的な大学の一部では、中学や高校の補習授業もやらなければならないという事態に陥っています。そういう人たちにはむしろ職業教育で自信をもたせて、職業人として社会へ送り出していくほうが遥かに有効だと考える人が多くなってきました。従来からの大学は、あくまでも学術研究に軸足を置くべきなのです。

文部科学省や国会の先生方にも、新機関創設に向けていろいろとお話をしていこうと思っています。

これからのスケジュールを考えてみますと、学校教育法の改正を含む新しい職業教育の枠組みの制度化に関する法律案は、この通常国会に提出されて審議に入るものと思われます。やはり、5、6月くらいに法案を国会できちんと通していただかないと新大学の創設スケジュールが計画通りにいかなくなります。新大学の申請から認可までには1年半かかりますから、今年の10月までに文部科学省に申請を出すことになるでしょう。平成31年春の開学に間に合わすためには、少なくても5、6月に学校教育法の改正案を通し、若干の周知期間を設けて申請書類が整ったところから10月までに受けつけるということになると思われます。

設置基準については、実際には法案と並行して文部科学省で検討されていくと思われますが、最終的には法案成立後に中央教育審議会のしかるべき会議で議論され、公表されることになるでしょう。このように新機関創設へのスケジュールが進行するのではないかと思っています。

私見ですが、できれば各都道府県に1校以上、これに大都市圏の複数校を加え、一定程度の学校群として、まさに地方創生の職業人材を輩出していくことになることが望まれます。そうすればそれぞれの地域にかなりのインパクトを与えます。新機関を卒業した優秀な人材が、それぞれの地域で産業の発展に貢献し、地方創生に大きく寄与することになるでしょう。

新高等教育機関の創設により職業教育の裾野さらに広がる

もちろん、専門学校のすべてが新大学になるわけではありません。しかし、新大学の創設によって日本の職業教育そのものが大きくクローズアップされることになり、国民の評価、国際的な評価が高まっていくことになります。

そこで、既存の専門学校の今後の役割について考えてみましょう。私は既存の専門学校によって、職業教育の裾野がさらに広がっていくことになると考えています。職業実践専門課程が創設されながら、文部科学大臣認定になっていない学校(学科)があります。現段階で制度発足後3年が経過し、職業実践専門課程になっている学校は全体の3分の1です。双方にそれぞれの存在意義があると考えています。

特に、先導的試行の職業実践専門課程につきましては、既存の専門学校を評価し、国民にその優位性を定着させていく意味においても、それぞれの専門学校でこの課程をきちんと導入し、発展させていくことが大切です。企業との連携を取り入れ、教育課程編成委員会や学校関係者評価委員会を作り、教育の成果や情報を公開することが義務づけられています。新しい仕組みの制度を取り入れて、まさに実学教育そのものであるということを社会に公表していかなければなりません。

この制度は今後も発展させ、そして継続していかなければならないと思っています。まず専門学校の中にあって、職業実践専門課程の大臣認定を受けて企業との連携により職業教育を充実・発展させることが重要です。職業実践専門課程の多くが2年課程ですから、卒業後に就職した人たちがもっと高度なことを学びたい場合には、専門職大学の3年次に編入して学位を取ればいいわけです。あらゆる分野でこのラインがきちんと立ち上がり、定着することを期待しています。

複線型の高等教育によって、従来の専門学校にも編入制度があるわけですから上のステージが見えてきます。職業実践専門課程は、専門学校教育の一つのあるべき姿として発展・維持させていくべきでしょう。従来の専門学校全体にとってもプラスになる制度だと考えています。

そこに繋がる具体的な支援制度はまだ明確ではありませんが、今後は何らかの方策を考えていくべきだと思っています。財政事情により一気にとはいきませんが、まずそこで教育を受けた人たちが地域の活性化のための中核的な人材として定着するようになっていくわけです。地方創生関連予算などを活用した支援制度が必要だと考えています。

きちんと実績を作りエビデンス(証拠・根拠)を示し有用性を証明して、学校への支援というよりも学ぶ学生に対する支援を取りつけていくことが重要です。そして働くことによって良き納税者となり、国民としての義務を果たしていく。さらなる支援体制によって好循環が生まれる。そういう実績を構築する年でありたいと考えています。

基本的には経済の活性化に必要なのは人材の活性化、高度化が一番大きなポイントになるわけです。人口が減っていく中でGDPを上げるには、人材を高度化して付加価値を高める方法しかないのです。それには国民の学び直し機関として、地域にそれぞれある専門学校がプラットホームの役割を果たしていくことが大変重要です。これは地方創生の要になっていくと思います。

介護関連2法をモデルに他分野も就労の機会拡大を

昨年の11月18日、参議院本会議で技能実習の対象職種に介護を新たに加える「外国人技能実習の適正化法案」と、日本で介護福祉士の国家資格を取得した外国人に「介護」の在留資格を与える「出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正法案」が可決・成立しました。

私は介護福祉士養成施設協会の代表として、3年前に国会・参議院の厚生労働委員会で2時間ほど、この法律の必要性について述べさせていただきました。留学の在留資格で来日し、介護福祉士の国家資格を取得した留学生に「介護」の在留資格を与えて就労できるようにすべきだと訴えました。これが国際社会に日本の介護を広げていくことになると説明したことが、介護関連2法の成立に繋がったと思っています。

特に東南アジアなどで衛生や食糧事情が良くなり、医療がいきわたって参りますと、必ず長寿社会が形成されます。長寿社会に必要なのは介護であります。日本は世界一の長寿国ですから、介護保険制度も確立され、介護福祉の政策も充実してきました。また介護福祉士の国家資格が制度化され、養成校にも注目が集まっております。いま130 万人が介護福祉士として働いています。こうしてたくさんの人材が中核となって現在の日本の長寿社会を支えているわけです。

先日、ベトナム大使と介護の必要性、介護人材の育成について話し合いました。そしてベトナムと連携し、ベトナムから日本の養成施設に留学し、在学中に介護福祉士の資格を取って日本で働いていただく。ある程度の経験を積んだあと、母国で介護士として日本の介護技術を広めていく、といった私の考えをお話しさせていただきました。ベトナムもやがて高齢化社会を迎えます。将来の介護の担い手やリーダーとして、介護人材育成の重要性を大使にも理解していただきました。

また中国大使とも会談しました。中国は一人っ子政策を40年近くやってきました。近い将来、日本以上の高齢化社会になるのは間違いありません。いかに日本の介護制度を取り入れていくか、大使は非常に強い関心を示されました。

国際社会も日本の介護制度に強い関心を示しています。インドネシア、フィリピン、ベトナムのEPA(経済連携協定)3か国だけではなく、国際社会のどこからでも外国人を受け入れ、介護について教育をすることが求められています。このたびの介護関連2法によって、在留資格や働く環境が整備されました。介護関連2法の成立は非常に大きな第一歩だと思っています。

資源の少ない日本は教育立国として、まず介護分野で模範となるモデルを作り、これを他の分野へも広げていくことが大切です。日本は人口減少社会ですから、若者がこれから増えることは考えられません。いろいろな国から若い人に留学生として日本に来ていただき、日本の様ざまな分野の国家資格を取って、日本で就労できるように国を開いていくことは、日本の経済活性化のためにも必要です。

介護はその良いモデルができたという認識を持っています。自動車整備や理容美容、調理など他分野にもこのたびの学びと就労の機会が波及していくようにするべきだと思います。移民を入れる前に、まず身近な方策でやれるところからやるべきです。

全国専修学校各種学校総連合会 小林 光俊会長
全国専修学校各種学校総連合会  小林 光俊会長
(公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会会長/学校法人敬心学園理事長)

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